【AI×仕事の考察】<B面>新しい世界で道を切り拓こうとする人間視点の話

2025-03-14
AI

前回が、仕事をAIに代替されうるかもしれない立場から見たAIの話だったのに対し、

今回は、新しい道を切り拓こうとしている立場から見たAIのお話。

 

A面はコチラ↓

【AI×仕事の考察】<A面>仕事をAIに代替されうる人間視点の話

 

私が会社員でいることをやめたのは、

ある事業の種に出会ったからだ。

この5年間は、こつこつとその種を育てつつ、

どうやってこれを樹木へと成長させていこうかと、

色々な人に会って話したり、相談したり、考えたりしながら模索している。

 

そうして最近になって薄々わかってきたのは、

「おそらく誰も、私の立てている"問い"の解き方を知らない」

ということ。

 

今の社会を1つのシステムとして見立てた時に、

「システムとして、ここがイケてないよね? このイケてないところを綺麗にするには、どうすればいいのだろう?」

というエンジニアとしての素朴な問いが、私の中にある。

 

その問いを解くためのアプローチの一手としてのアイデアが、5年前に出会った種だ。

その種を本葉が出てくるくらいまでに育ててから、ビジネスや起業に詳しい人のところに相談に行けば、色々具体的なアドバイスをもらえて色々進むかと思っていたのだが、

実際に本葉が出てきたそれを持って、色々な人に会いに行ってみたら、期待していたようには全く進まなかった。

世の中にはビジネスや起業のプロがいっぱいいると思っていたので、この進まなさに、実は結構びっくりした。

 

内訳としては、まったく話が噛み合わなかった相手がほんの少しと、

多くの場合は、私の話に興味を示してくれるけれど、具体的にどうすればいいかという相談については「うーーーん…」と首を傾げて押し黙る人々や、

あるいは「役に立つかはわからないけど…」と、彼らの中にある何らかの役には立つかもしれない欠片を絞り出してくれる人たち。

 

興味を示してくれた人たちは、口を揃えて、

「あなたのやっていることが、どうなっていくのかは見てみたい」

と言ってくれた。

その言葉に、ギャラリーを募集しているんじゃないんだけどなぁ…と思いつつも、

次第にわかってきた。

 

今のビジネスたちは、今の社会システム――私の目から見てイケてないシステムに見えているもの――の上で成り立っているものなのだ。

だから、そのイケてないシステムの上で成り立つビジネスハックを知っている人はいても、

そのシステムを綺麗にするためにどうすればいいか、を知っている人はいないのだ。

 

それならば仕方ない、自分で考えよう。私はシステムアーキテクトなのだから。

そうして、小さな欠片をかき集めながら、うーん…うーん…と考えながら、次の一歩を踏み出すための足先10cmの道を作りながら10cmずつ進んでいる。

 

先日。

次の一歩として踏み出す先をどこにするか、を考えるためにChatGPTくんに相談してみた。

ChatGPTくんの持つ情報も、現状の社会システムの上に成り立つビジネスの情報がほとんどなので、私の言っていることをすぐには理解しない。

「違う、違う。そういうことじゃないの!」

と言いながら、私が書き溜めたあれやらこれやらをChatGPTくんに渡して説明する。

(遠慮なく全ダメ出しをできるのも、ChatGPTくんの利点だ)

 

ChatGPTくんに理解してもらうのは、やっぱ難しいかなー、と内心ちらりと思っていたが、しばらくすると、話がだいぶ噛み合うようになってきた。

細かいところはたぶんわかってないだろうな、と思うけど、おおよそ噛み合う。

本当にAIの進歩は目覚ましい。

 

そうして、私のやろうとしていることを、おおよそ理解したChatGPTくんは言った。

「あなたがやろうとしていることは、とてつもなく難しいことです」

 

”とてつもなく難しい”認定。

うん、まぁ知ってる。

 

ChatGPTくんの良いところは、それでも、

ChatGPTくんなりの打ち手の提案をしてきてくれるところだ。

ただ、残念ながら、ChatGPTくんの提案してくれた打ち手は、

「それは既にやってる」

「それも既にやってる」

「それも、もうやってる」

という感じで、最後、

「さすがです…」

とChatGPTくんは私に敬服して沈黙した。

 

いや、静かにならないでよ。

と、つっこむと、ChatGPTくんは頑張って、私の考えの整理やら何らかの提案やらを続けてくれる。

(めげずに付き合ってくれるところも、ChatGPTくんの良いところだ)

 

そうして、ChatGPTくんと問答を繰り返した結果、

とりあえずの次の一手が決まる。

その一手は、実は既に着手していたものだったが、優先度が判断できずに保留していたタスクで、ChatGPTくんと話し合ううちに、これが一番優先順位高そうだね、ということになった形だ。

つまり、ChatGPTくんとの対話は、自分の中に既にあるものを、彼との対話を通じて整理し、引き出していく作業ということだ。

 

この時、ふと、昔、何かの本で読んだ、

どこかの大企業の経営者がもっとも重宝したメンターは20代の新人メンターだった、という話を思い出した。

要は、経営者相手に必要なのは、知識の提供よりも、彼らの話を深く聞いて、考えを整理して、最適な意思決定ができるようにサポートすることだという話。

 

まぁ、そうだよね、と思う。

本当に先進的なことを考えているのならば、その答えは外側にはなく、彼らの内側から見つけ出すしかないのだから。

 

そうして、ここで、さらに思った。

あれ? もしかして私、そういう大企業の経営者と似たようなことを、今やっちゃってる??

 

ChatGPTくんに、経営者向けメンターの相場を聞いてみたら、「時間あたり数万円から数十万円程度」とのことだった。個人の零細起業家が依頼することなんて、まずできない。

だけど、AIの発展により、今の私は近いサービスを受けることができてしまっているのだ。

もちろん、本当のプロに依頼したことはないから、プロとAIの品質の差のようなものは判断し得ないけど。

 

そうして、前回書いたA面の話を思い出しながら考える。

 

私がAIを使ってメンタリングサービスを受けるのは、「メンターの仕事なんて、AIにもできることでしょ」と軽んじているからではない。個人では手の出せなかったものがAIのおかげで、享受することができるようになったからだ。

 

私にとっての技術とは、なんだろう?

 

それは、

それぞれの人が、それぞれのやりたいことを実現するための

手助けとなる道具を手渡すことだ。

 

技術の進歩のおかげで、個人レベルでできることは格段に増えた。

たとえば、個人が起業するハードルは、昔よりずっと下がった。

freeeを使えば30分で個人事業主として開業できるし、青色申告だってそこまで難しくない。

3Dプリンターを使うことで、今までだったら工場に頼まないと作れなかったものが、個人で作ることが可能な時代になった。

そうして、こんな風に、今までだったら、資金に余裕のある企業の経営者でなければ受けることのできなかったメンタリングサービスを、AIの力によって受けることができる時代になった。

従来のビジネスの「常識的なハードル」は、どんどん崩れてきている。

 

PCが普及し始めた当初は、IT化といえば、

紙ベースの従来業務を単純にデジタルに置き換えることがほとんどだった。

だけど、本当に意味のあるシステムを作るには、『現代の環境に最適化された形を考えること』が大切で、近年になって、ようやく、PCやスマホが当たり前に行き渡っている環境を前提としたシステム設計の大切さにフォーカスされるようになってきた。

 

だから、「AIで○○の仕事を代替する」という考え方は、

システムデザイン的にはナンセンスなのだ。

 

今の私は、考えていることの壮大さに比して、

使えるものは、この身ひとつしかない。

ぶっちゃけ、お金だって全然ない。

 

だけど、そんな状態だからこそ、今この時代の後押しをもらって、

既存のビジネスモデルとは全く違うビジネスモデルを、まっさらな状態から考えることができるんじゃないか?

「そもそも自分は何をしたいのか?」

「何を実現したいのか?」

っていうところを真ん中に据えて、そのための手段として今ある技術や環境を総動員して、ゼロから組み立てて考えることができるんじゃないか?

そう思った。

 

今までは個人レベルで享受することの難しかったあれこれを、

AI含む各種技術によって手にしやすくなった新しい世界で、

自分のやりたいことに真っ直ぐに手を伸ばすということ。

**「今だからこそ成立する仕組み」**を考えること。

 

そして、私の目指す「綺麗な社会システム」というのは、

私が価値あると思っているものたちに、きちんと敬意が払われる世界でもある。

 

私の抱える"問い"の解き方は、まだわからない。

だけど、何となく、解き方の入り口が見え始めたような気がしている。